ハーブ通信 国内編

ハーブ通信 国内編

先日、福岡に出かけた折、かねてより見学したいと思っていたころへ訪ねました。

そこは、昔ながらの製法で、天然樟脳を製造する「内野樟脳製造工場」でした。
その工場は、福岡県みやま市瀬高町にあり、周辺に流れる矢部川の堤防や河川敷に、大木のクスノキが林立する素晴らしい風景の中にありました。
樟脳の歴史は古く、西暦600年ごろから貴重な薬や宗教上の霊剤として利活用されていました。
日本では、江戸時代の元禄年間1700年頃といわれており、樟脳が製造され、鉄砲、蝋、漆とともに、貴重な産物として位置付られました。

ハーブでつくる輪・和・環
ハーブでつくる輪・和・環

虫を寄せつけないだけでなく、防湿、鎮痛、消炎、血行促進など、様々な力を持つスグレモノでありました。
古の人は、「奇(クス)し木」「臭(クス)し木」などと呼び、「クスノキ」の語源となったようです。

私が居住する神戸市には、戦前、鈴木商店という大商社があり、樟脳、薄荷、砂糖などの輸出入で急成長した歴史があり、それは、土佐出身の番頭金子直吉が、三菱財閥の創業者岩崎弥太郎も行った土佐式蒸留方式による樟脳抽出を神戸で行い、主力商品に育てたことがきっかけであったようです。
明治維新を支えたともいわれる「天然樟脳」、今一度見直してみたいものですね。

引用文献:
「天然樟脳」 内野 清一・和代 かたりべ文庫
「お家さん(上下)」 玉岡 かおる(新潮文庫)新潮社

JHS元理事長 石原 憲一郎